イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』の話題が出たので、"My Favorite Songs"とは別枠でちょっとだけ触れておこうと思う。
この曲が好きだという人は多い。しかし、その歌詞はと言えば、ほとんど理解不能な内容だ。詩全体が隠喩に満ちていて、字面だけ追ってもなんのことやらさっぱり。とても情景的なのだが、想像すればするほど不気味な世界が見えてくる。 一般的には、細かい解釈こそ違うものの、『ホテル・カリフォルニア』がリリースされた1976年当時の、アメリカの社会的、政治的な事情を風刺したものと受け止められている。またなかには、イーグルス自らが置かれた状況を歌っているという人もいる。 歌詞は長いが、とりあえず全部引用しておく。 ------------------------------------------------------------------------------ Hotel California On a dark desert highway Cool wind in my hair Warm smell of colitas Rising up through the air Up ahead in the distance I saw a shimmering light My head grew heavy, and my sight grew dim I had to stop for the night There she stood in the doorway I heard the mission bell And I was thinking to myself This could be Heaven or this could be Hell Then she lit up a candle And she showed me the way There were voices down the corridor I thought I heard them say Welcome to the Hotel California Such a lovely place Such a lovely place (background) Such a lovely face Plenty of room at the Hotel California Any time of year Any time of year (background) You can find it here You can find it here Her mind is Tiffany twisted She's got the Mercedes bends She's got a lot of pretty, pretty boys That she calls friends How they dance in the courtyard Sweet summer sweat Some dance to remember Some dance to forget So I called up the Captain Please bring me my wine He said We haven't had that spirit here since 1969 And still those voices are calling from far away Wake you up in the middle of the night Just to hear them say Welcome to the Hotel California Such a lovely Place Such a lovely Place (background) Such a lovely face They're livin' it up at the Hotel California What a nice surprise What a nice surprise (background) Bring your alibies Mirrors on the ceiling Pink champagne on ice And she said We are all just prisoners here Of our own device And in the master's chambers They gathered for the feast They stab it with their steely knives But they just can't kill the beast Last thing I remember I was running for the door I had to find the passage back to the place I was before Relax said the nightman We are programed to recieve You can check out any time you like But you can never leave (訳) 暗い砂漠のハイウエェイを走っている。 冷たい風が自分の髪をなでていく。 マリファナの生暖かい匂いが、 空気中を舞っている。 はるか前方に かすかにきらめく光が見えた。 頭が重く感じられれ、目もかすんできた。 今晩の宿をとらねば。 女主人がホテルの入り口に立っていた。 教会の礼拝の鐘が聞こえる。 僕は心の中で思った。 ここは天国だろうか、それとも地獄だろうか? 彼女は、ロウソクに火を灯し、 僕を案内した。 廊下の奥で囁く声が聞こえる、 こう言ってるように。 ホテル・カリフォルニアへようこそ ここは素敵な場所ですし、 お客様も良い方ばかり。 当ホテルにはたくさんのお部屋があり、 いつでもあなたのお越しをお待ちしています。 女主人の心は、ティファニー漬けのように物欲にまみれ、 ベンツも持っていて、歪んでいる。 大勢の、それはそれは美しいボーイたち、 彼女は彼らを友人と呼ぶ。 彼らは中庭でダンスを踊っている。 夏の夜に甘い汗の匂いが漂う。 思いを心に刻むためのダンス すべてを忘れるためのダンス 僕はボーイ長を呼んだ。 「ワインを持ってきてくれないか?」 彼は答えた。 「1969年以降、私どものところにはそのようなお酒は置いておりません。」 遠くから、まだあの声が聞こえてくる。 真夜中に人の目を覚まさせるあの声 ただこう聞こえてくる。 ホテル・カリフォルニアへようこそ ホテル・カリフォルニアへようこそ ここは素敵な場所ですし、 お客様も良い方ばかり。 みなさま、当ホテルで豪勢にに楽しく過ごされています。 口実の許すかぎり、このお楽しみをご享受ください。 鏡張りの天井 氷の浮かぶロゼのシャンパン 彼女は言った。 「私たちはみな、自らの企みに囚われた囚人なのです。」 それから女主人の部屋に みんなが祝宴に集まった。 彼らはご馳走に鋭いナイフを突き立てるのだが、 誰もその獣を殺すことができない。 最後に自分が憶えているのは、 出口を求めて走りまわっていたこと。 戻る道を見つけなければ。。。 自分がもとにいた場所を。 「落ち着いて。」夜警が言った。 「私たちは受け入れるように仕組まれているです。 チェック・アウトしたければ、いつでお好きな時に。 でも、ここを立ち去ることは決してできないのです。」 (訳:宇宙猫星人) ------------------------------------------------------------------------------ かなり意訳も入ってるが、だいたいこんな感じだろうか。 1つの単語に2つの意味を引っ掛けたり、いろいろな解釈が成り立つような隠喩がちりばめられているので、なかなか一筋縄ではいかない。 ここで歌われているホテル・カリフォルニアは、アメリカ社会そのものを象徴していると思われる。 当時、アメリカはベトナム戦争に負け、人々は身も心も疲弊し、政財界を中心に腐敗がはびこっていた。世の中を支配しているのは、お金、もの、セックス、そしてドラッグ。もちろん、現在においてもその状況に変わりはない。たが、当時の人々はまだ、古きよきアメリカを心に抱いていた。「戻る道を見つけなければ。。。自分がもとにいた場所を。」というのは、アメリカ人が自らに対して良心とプライドを持っていた頃の精神を取り戻さねば、という思いの表れに違いない。 「1969年以降、私どものところにはそのようなお酒は置いておりません。」 英語の"spirit"は、ここでは直前の"wine"を受けて「お酒」の意味だが、「精神」」というもう1つの意味をひっかけて使われている。69年以降、そうような精神は、もうアメリカには存在していない。そういうことだ。69年というと、ニクソン大統領が就任した年で、彼は後にウォーターゲート事件という一大政治スキャンダルを起こし、弾劾裁判で辞任に追い込まれた。アメリカの政治腐敗のピークだ。おそらく、この辺の背景を暗示しているのではないか。 余談だが、この曲がリリースされた年はアメリカの大統領選挙の年だった。 ニクソンが弾劾辞任後の3年間、副大統領だったフォードが大統領になる。しかし、共和党政治にうんざりしていたアメリカの国民は、そのとき全くと言っていいほど無名だった民主党のジミー・カーターを新しい大統領に選ぶ。ジミー・カーター(Jimmy Carter)のイニシャルはJC。そして、イエス・キリスト(Jesus Christ)のイニシャルもJC。古き良き時代を感じさせる優しい物腰の彼を、タイム誌など当時のマスコミは、アメリカを救う「救世主」と呼んでいたのを、今でも覚えている。 さて、話を戻そう。 この歌詞の中でとりわけ不気味なのは、最後のパートだ。 密室のような部屋で、みんなが宴と称して寄ってたかって獣にナイフを突き刺している。この状況に怖れをなして逃げようとしても、一時的にチェック・アウトこそできても、「ここを立ち去ることは決してできない」。アメリカ人はアメリカ人である限り、自らはまってしまった物質主義の社会から逃れらなれないというわけだ。 こうしてみると、なんとも不気味、かつ救いようのない歌である。 そして、この曲が生まれてちょうど30年がたった今、これは単にアメリカだけの話ではなく、地球全体がホテル・カルフォルニア化してしまったと考えるべきではないだろうか。 「でも、ここを立ち去ることは決してできないのです。」 もし人類全体がそうした状況に陥っているのだとしたら、この地球を捨てて「立ち去る」のではなく、我々一人一人が、自らの心を変えていくしか方法はないのだろう。。。。
by spacecat2006
| 2006-09-21 12:34
| ● エッセイ
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■■■■ PROFILE ■
位相の違いで地球からは見えないが、太陽系から約ニャン光年離れた宇宙猫星にたった一匹で住んでいる。
地球は縄張りの一つで、宇宙猫星と地球の間をニャープで往復しながら、人類の精神面における進化を観察中。 最近では、高次な次元につながると『猫さま』に変身すると言われている。 rainbow harmony 管理人 その他のジャンル
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